■ヘレスで暮らす人々~第一回 秦 晴美さん
ヘレスで暮らす人々、一回目は私がブレリアのクラスで出会ったはるみちゃん。ということで今回はフラメンコ中心の話。現在は3ヶ月おきに日本とスペインを往復する生活をしているはるみちゃん。彼女は「ヘレスのブレリア」をよく理解している人。私から見た「ヘレスのブレリア」はとても難しい。今後の活動も気になるはるみちゃんに話を聞いてみました。
インタビュー:2007年5月
 
 
  3ヶ月の日本滞在中のみヘレスのブレリアクラスを大阪にて開催。
隔週の土曜日6時から8時。カンテ、ギター付。
詳細はメールで尋ねてください。
E-MAIL:sayuharu@k.vodafone.ne.jp

秦晴美ブログ:http://lunadejerez.cocolog-nifty.com/blog/
 
 
 
-最初にヘレスに来た理由は。滞在期間はどのくらいですか。
フラメンコを習っている中、ヘレス好きなギタリストとその奥さんとお友達になったんです。二人の話を聞くうちにどんどんへレスのフラメンコに直接触れてみたくなって、来ました。
これまで、3ヶ月、1年と滞在期間は色々ですが、延べで2年3ヶ月くらい滞在しています。
-ここヘレスでどのようにフラメンコに接していますか。
へレスでは一番大切にしていることは、ペーニャやヒターノ達のフエルガで唄を出来るだけ聞いて感じることと、へレスのコンパスを体の中に溜めることです。というのも、唄が大好きなんですよ。私の初めてのフラメンコは映画「カルロス・サウラのフラメンコ」。マヌエル・アグヘータ、マヌエル・モネオ、パケーラ、エル・ トルタやフェルナンダ・デ・ウトレラ達によるフラメンコで鳥肌が立ちました。へレスには日常的にも唄があるから、唄に接しないともったいないです。私は上手に唄えないから踊りを選びましたが、へレスの人の唄うブレリアにぴったり併せて踊れたら、もう最高です!
-誰のクラスを受けていますか。
ヘレスではアナ・マリア・ロペスのクラス、それとは別に週2回セビージャでコンチャ・バルガスのクラスを受けています。前者はブレリア、後者はその他パロ中心のクラスです。別に歌のクラスも受けていて、ホセ・メンデスに2週間に1回くらいの割合でヘレスのブレリアを中心に習っています。
-ブレリアは難しいですよね。
難しいです。へレスのブレリアの人たちと私たち日本人のリズム感覚の違いにおののくことはしょっちゅうです。例えば、私の唄の先生ホセが「今日は難しいブレリアをやろう!」と言って教えてくれるブレリアは、自分にとって難しいけれども、まだ易しい方。ホセが考える「難しいブレリア」には、メロディーがあって、それを理解すれば日本人の私には逆にとっつきやすいんです。それに比べてティピコなブレリア・デ・ヘレスは、多くがよく似ていて一見狭い音階の中で決まった音を通るシンプルなものに感じるんですが(たくさんの違う地域の人が「ヘレスのブレリアはいつも同じで変化がない。」というほど。)、とんでもない。同じような中で彼 らがどんなにリズムの変化を感じ操り、遊んでコンパスの泉をつくっているか。そしてそれこそがおいしいおいしい所で、また難しい難しい所だと思います。
-ブレリア・デ・ヘレスを学びに来る日本人は多いですが、ヘレスのブレリアを学ぶにあたって何を心がければよいと思いますか。
唄と踊りとギターは三位一体であるべきだ、といいますが、ヘレスのブレリアでは特にそれを感じます。どうしてかというと、いつも唄があるからです。例えば、よくブレリアの構成で、唄ではじまり、レトラが終わってジャマーダをしてまた唄を呼び、次のレトラの間はマルカール、レトラが終わったらジャマーダをしてパタをしてから抜けると、次のレトラが来る。というのがありますが、ヘレスのブレリアの場合はマルカールの時も、ジャマーダのときもパタの時も、いつもいつも唄と一緒。ずっとお互いを感じる必要があるんです。だからこそ一緒と感じれたときは本当に最高です。ヘレスのブレリアを学ぶにはとにかく唄をたくさんきいてもらって、最初はとてもシンプルな振りを学んで、唄を聞きながら踊る習慣をつけることをおすすめします。そしてへレスを訪ねてもらった時には、ブレリアのコンパスの中で一体何が起こるのかを生の感覚で感じてもらいたいです。
-日本でできることは何かあるでしょうか。
歌を聴くこと。ヘレスの人達のCD等を沢山聴いて、ヘレスの独特なコンパスの波を意識してみること。沢山聞いていると、もし自分が踊れなくても、実際踊りを見たときどんな感じで歌とあわせて踊っているかということがわかるようになる。
(わかるようになると実際習った場合に、頭の中で整理し体で吸収するのが早いです。)
-ヘレスという町について質問です。暮らしてみて、ヘレスをどう思いますか。
センシージョ…素朴。大きな田舎。都市化が進んでるけどそれほど都会ではない。それでここまでフラメンコが残っているんだろうなと思う。フラメンコが残っている数少ない町の一つ。これからもあまり変わらないで欲しいと思う。
-ヘレスの人々と接して困ることは何かありますか。
良いところとそうでないところは表裏一体ですが、馴染んでくるとすごく仲良くなれて良いのだけど、だんだん干渉が多くなり、例えば予定の8割くらいを教えておかないと気がすまなかったりする。日本と違って人と人との距離が近すぎるので、感覚の違いに戸惑うことがあります。でも、そこがよい所でもありますね。
 
-はるみちゃんの今後の予定を教えてください。
3ヶ月ごとにヘレス-日本を往復する生活を続ける中でヘレスでは学び、日本では表現することを中心に活動をしていきたいです。
日本にいるときはヘレスのブレリアクラスをはじめています。ヘレスのブレリアを知りたいけれど日本で接することが出来ない人も多いと思いますがそんな人にもヘレスのブレリアを好きになってもらいたい。フラメンコは1人では出来ないものだけど、特にヘレスのブレリアは仲間がいればそれだけ楽しいものなので、ヘレスのブレリア好きな人が増えればいいなと思う。とりあえず大阪を中心に3ヶ月間のクルシージョとライブ行い、リクエストがあればその他の場所でもやっていきたいです。
 
 
 
秦 晴美(HATA HARUMI)
大阪出身。別の仕事をする中、趣味でフラメンコを始める。約5年前から日本-スペインを往復し真剣にフラメンコを学び始める。特にヘレスのブレリアをアナ・マリア・ロペスのクラスで様々な角度から研究中。更に踊りのクラスでは味わえないヒターノ達によるフィエスタやチキ・デ・ヘレス、アントニオ・ヘロとの共演で唄での舞台経験もある。また、セビージャにも足を運び、コンチャ・バルガス、アンヘリータ・バルガス、カルメン・レディスマ、ファナ・アマジャ等に師事。