ヘレサーノインタビュー
フツーに暮らす
フツーのヘレサーノに
インタビュー
JUAN DE DIOS MORENO PEREZ
(フアン・デ・ディオス・モレノ・ペレス)
 
ホアンデの愛するモロッコは、
その昔アンダルシアに栄えた文化の行き着いた先でもある。
似通った顔立ち、文化、食べ物、
そして全く違った一面。
知れば知るほど面白い。
 
◆インタビューに関する日記
 
2011年5月31日
シェフシャウエンにて
インタビュー: 堀江 啓子
 
 
 
モロッコ個人旅行を企画、定期的に少人数のグループでツアーを行います。スペイン、アンダルシアからモロッコへ船で、その昔アンダルシアに住んでいたアラブ人達が辿った道を辿りながら、移民の歴史に触れ、モロッコの人々に触れながら、要望に合わせた旅を企画します。
※ 彼のスペイン語の説明で周る旅と、日本語通訳付きの旅が選べます。
「Experto en interpretación del Patrimonio Andalusí.」の単位を取得しアンダルス文化の説明を行っています。
モロッコへの旅についてのお問い合わせはguia@blancaluna.com(堀江)までメールください(カディス県タリファから船を使った旅となります)。
<旅のルート例 (ルートは色々指定できます)>
ヘレスのアルカーサル(アラブ城)を見学し(オプション)出発  → 車にて白い村 メディナ・シドニア又はベヘール・デ・ラ・フロンテーラに立ち寄り昼食  → モーロ人が初めて上陸したタリファにてアラブ城を見学し乗船  → モロッコ タンジェに到着しタクシー乗車  → テトゥアン立ち寄り  → レコンキスタ後沢山の人々が行き着いた白い村、シェフシャウエンに宿泊(1泊又は2泊)  → タクシーにてタンジェへ  → 乗船 → タリファに到着し車にてヘレスへ(都合の良い場所で解散)
※ 滞在中の町によって車で拾いそのままタリファに向かう又は公共交通機関を利用して事前にお迎えに行く事も相談に乗ります
ー あなたの住んでいる場所ってどんな所?
Juande. ヘレスのソナ・ルラル(同じヘレス市ではあるけれど、街の中心地から外れて別地域として作られた周辺地域)フランコ政権時代、1950年に作られた地域で、スペイン全体で300個くらいあります。新しく開拓された地域なんです。
ー その場所は「村」になるの?ヘレスの一部なんでしょ?
Juande. ヘレスはその小さい地域の行政中心地で、病院だとか、映画館だとか、周辺地域にないサービスがあるので、それを求める場合はヘレスに行く必要がります。
自分の地域に住んでいる人たちは農業や牧畜、サービス業(バルやレストランのウエイター、店員)等で生計を立てている人が多いです。
ー あなたの仕事は何?
Juande. 私は大学で化学を専攻したのですがここでは専攻したものでは何も仕事が見つからなかったので、20年間郵便局員として働いていたのですが、20年経った時に失業してしまったんです。
今はヘレス警察所属の家の無い人の為のの宿泊所の監視員をしています。
この仕事には満足しているのですが、これとは別で、身近な異国モロッコへ少人数のグループで行く旅行を企画・同行もしています。歴史が好きで特にアンダルス文化に興味がありこれまで勉強してきたため、その知識を生かし説明・案内しながらの旅です。大きなグループではなく、少人数で何がやりたいかを確認して行く旅行。例えば砂漠やモニュメントを見る、買い物をする、モロッコにてグループがやりたい事に自分が同行し、迷わないよう案内をし、モロッコを楽しむ事ができるよう手助けをします。
ー 最初どのようにモロッコに辿りついたの?
Juande. 友達達と一緒に来たのが最初で、11日間色々な場所を周りました。
そしてその最初の旅行でモロッコに恋してしまい、何度も来ては新しい事を発見し、今個人旅行を企画し人々に同行する時にその知識を生かしています。
ー 私達は今北モロッコにいるけれど、ここの景色は私が今住んでいるアンダルシアの景色とそっくり。
Juande. 北モロッコと南スペイン、アンダルシアはほとんど同じ。同じ景色、同じ植物、花、動物・・・人も同じ。なぜかというとスペインには8世紀も続いたアル・アンダルスの時代にアラブ人達が住んでいて、彼らの特徴や文化、アンダルスの生活スタイルを残していったため、モロッコのアラブ人とはものすごく似通っています。
ー ではモロッコとアンダルシアの間にはどんな違いがある?
Juande. 違いといえば大きな所は宗教が違う事。モロッコはイスラム教国であり、宗教が大きな位置をしめている。宗教が生活に根付いている。スペインはキリスト教国だけれど、非宗教化している。今時のスペインの若者はそれ程信心深くない。教会には行かないし、それ程お祈りもやらない。人によっては地域の教会に行く人もいるけれど、イスラム教を信仰する人程の重要さはなくてこれが一番の違いだと思う。

それ以外の事に関しては自分達の生活様式はすごく似通っています。感覚とか食べる物とか。

ー 顔もそっくり。モロッコの人たちがジュラバを着ていないと、私にはスペイン人とモロッコ人の見分けがつかない時がある。
Juande. スペイン人はヨーロッパ風にジーンズとかTシャツとか洋服を着ている。モロッコの人たちはジュラバを着ていて。でも若者達は少しずつ洋服を着るようになってきている。特に北の方、特にタンジェやテトゥアン、シャウエン等はヨーロッパの影響を受けていて、南の方がまだ素朴なモロッコらしい生活が残っていたりする。
ー でもシャウエンは随分最近まで閉鎖された町だったと聞きましたが、どんな所なの?
Juande. シャウエンに関しては比較的新しくモリスコスによって出来上がった町です。スペインのレコンキスタ(国土回復運動)で国を追われた人々、グラナダのアルプハラだったり、カディスのグラサレマやロンダの山の村に住んでいてモロッコに来た人々が、テトゥアンやフェズ、そしてシャウエン等モロッコ北部にやってきて住み着き、スペインイスラム教徒の持っていた手工芸品や知識を持って来たんです。(シャウエンはその後数世紀間、神聖な場所として外国人の受け入れをしていませんでした。)
ー 通常モロッコの町に行ってどんな事をするの?
Juande. まず最初、出発前に集まって、何をするか、どこに行くか、何を見ることができるか説明をし、それから何をしたいかを確認します。できるだけ要望を聞いて、個々にあわせたサービスを提供します。
例えばモニュメントを見るとか、コーランの学校にいってみるとか。
ー コーランの学校って何?
Juande. イスラム教の人々は子供の頃、コーランの学校に行って勉強します。その学校の事。

その他砂漠に行くとか、田舎の暮らしを体験してみるとか、海に行ってみるとか、モスクや庭を見て歩くとか、山歩きをするとか、自然公園に行くとか。まだまだここはヨーロッパ程観光が普及しているわけではないし、おそらくモロッコの中ですごく観光客の多い町というのはマラケシュなくらい。
モロッコの人は普通サービス精神旺盛です。お茶を出し、人を招待するのを好み、話をし、すごく皆と近くにいるのが好きな人々です。

ー では、食に関して。こちらの食べ物とモロッコの食べ物とでは似てる物が沢山あると思うのだけど。
Juande. スペインに以前住んでいたアラブ人達は沢山の文化を残して去って行きました。食についても同じく。例えばお菓子はアラブ文化が残した物が多い。ここら辺でクリスマスに食べるお菓子ペスティーニョだったり、アロス・コン・レチェ(米と牛乳で作ったデザート)も。煮込み等のお料理でもスパイス類の使い方とか似てる所があるし、チュロスみたいなマサ・フリッタ(生地を揚げるタイプのお菓子)も彼らが残していった物。ベレンへナフリッタ・コン・ミエル(茄子フライ、蜂蜜ソースがけ)もアラブ系のお料理、ガスパッチョも、地中海沿岸のアラブの地域では似たような、冷たい野菜やフルーツのジュースを飲む。食事を取る時間も含めて似てる事が多いです。
ー フアンデの企画する旅のルートについて。
Juande. 例えばアンダルシアの白い村を通ってモロッコに渡り村を比較するようなルート。具体的にはここカディス県だと、アルコス・デ・ラ・フロンテーラ、メディナ・シドニア、ベヘール・デ・ラ・フロンテーラ等の白い村を通り、モロッコに渡る。白い村の建物だったり、建築方法だったり、住居の壁を塗るのに石灰を使う事とか似通った点が多いです。

モロッコは北部と南部で景色が全然異なります。南はアフリカ内部に入っていくため、肌の色はもっと黒く、アラブ文化が根強かったり、逆に北部の人はアンダルシアの人と似ていて、肌の色、生活スタイル等が似てたりする。
北の町であれば例えばタンジェ・テトゥアン・シャウエン・ララチェ・アシラ等の村を周ったり、南の方であれば、カスバ街道だったり、日干し煉瓦で造られた民家を見るルートだったり、北部とは異なった景色を見る事ができて面白いです。

私から見るとスペインもモロッコもとても魅力的な国。アンダルシアに住んで、モロッコを見ると宗教も違えば言葉も違う、全く違った文化を持った国なのにすごく似てる部分があって面白い。日本から見ると本当に遠くてどちらも異文化を体験する事ができて驚きも多いけれど、モロッコで声をかけてくれた人を安易に信用して嫌な事に巻き込まれてしまったと昔人から聞いた話。遠い国に住む私達には事情がわかりにくいし気をつけなければならない事もあると思う。色々な旅のスタイルがあるけれどモロッコの事情を知る人と行く旅は事情の異なる遠い国を、そこでの新たな出会いを、リラックスして楽しむことができる旅になるかも。
例えばヘレスでこちら風のパティオ(中庭)付きピソ(アパート)に宿泊し、お料理なんて教わって生活をちょっと体験してからアンダルシアの白い村を周ってモロッコへ旅をする。お酒の町から禁酒の国へ。
少しゆったりしたペースで、視点を変えて、街や人の雰囲気を味わいながら違いを楽しむ旅をしてみてはどうでしょう?